世界的に有名な日本の「おもてなし」文化。そのきめ細やかな心遣いは、日本を訪れるムスリム観光客にも向けられています。単にハラールメニューを用意するだけでなく、文化や習慣を深く理解しようとする姿勢に、多くのムスリムが感動を覚えています。
今回は、実際にムスリム観光客から寄せられた「日本のここが凄い!」という感動のサービス事例をいくつかご紹介します。
#### 事例1:手作りの「キブラ」と礼拝マット(旅館)
ある地方の温泉旅館での出来事。ハラール対応の食事を予約して宿泊したところ、部屋には女将さん手作りの「キブラ(メッカの方向を示す矢印)」が天井に貼られていました。さらに、貸し出し用の礼拝マットも用意されており、その心遣いに深く感動したといいます。大手ホテルではなく、地方の小さな旅館が、自分たちのためにここまで勉強し、準備してくれたことに、本当のおもてなしの心を感じたそうです。
#### 事例2:「祈りの時間ですよ」と教えてくれたレストランの店員
あるハラールレストランで食事をしていた時のこと。夢中になって会話を楽しんでいると、お店のスタッフがそっとテーブルに来て、「お客様、まもなくマグリブ(日没)のお祈りの時間ですが、よろしいですか?」と声をかけてくれました。店内に礼拝スペースがあったため、時間を気にかけてくれていたのです。単に食事を提供するだけでなく、信仰生活にまで寄り添おうとする姿勢に、心からの感謝を覚えたと語ります。
#### 事例3:ムスリマのための貸切温泉(スパ施設)
日本の温泉を楽しみたいけれど、人前で肌を見せることに抵抗があるムスリマは少なくありません。そんな中、ある温泉施設では、特定の時間帯を「女性専用・貸切」とし、さらにその時間は湯浴み着(体を覆ったまま入浴できる専用着)の着用をOKにするという対応を始めました。これにより、多くのムスリマが、諦めていた日本の温泉文化を初めて体験することができ、最高の思い出になったといいます。
#### 事例4:原材料を一緒に調べてくれたスーパーの店員
スーパーでどのドレッシングが買えるか分からず困っていたところ、一人の店員が声をかけてくれました。事情を話すと、その店員はスマートフォンの翻訳アプリを使いながら、一緒に商品の裏の原材料表示を一つひとつ確認し、アルコールや動物由来成分が入っていないものを探してくれたそうです。マニュアルにないであろう親切な行動に、日本の人々の誠実さを感じたといいます。
これらの事例は、日本の「おもてなし」が、単なるビジネスライクなサービスではなく、相手の文化を尊重し、心から快適に過ごしてほしいと願う気持ちの表れであることを示しています。こうした温かい心との出会いこそが、日本旅行を忘れられないものにしているのです。